耳に付くのは己の荒い息遣いと背後から徐々に迫る静かな足音
体力も限界であろう男の視界の先に僅かな灯りが映り込む
男が僅かに安堵した矢先、突如現れた影に身体を押さえつけられる
「どうする?」
影の主が問うと、暗闇から短剣が風を斬る様に飛び出した
それを指先で器用に掴み影の主は呟く
「仕事なんだ、悪く思うなよ?」
男の視界が己の吹き出す鮮血で埋め尽くされ、冷たい地面にその身体を沈めた
「やれやれ、男と鬼ごっこは趣味じゃねぇんだがな」
影の主が溜息を漏らすと、暗闇から月明かりに照らされた女の姿が現れる
「自業自得でしょう?」
女が冷たく言い放ち、その手から短剣を抜き取って拭い始めた
「お前さんが一緒だったお陰で助かったぜ?何せ、俺の扱いが上手いからな」
男が壁にもたれながら懐の煙草を取り出すと、女は呆れた顔で大きな息を漏らす
「アンタのお守りを何年もやらされれば、嫌でも覚えるわよ」
一瞬意外そうな顔をした後、男がニヤリと笑う
一瞬意外そうな顔をした後、男がニヤリと笑う
「もうそんなに経つか?俺と過ごした時間を数えてるとは、可愛い気のある子猫ちゃんだな」
そう言って男が女の腰に手を回すと、静まり返った路地裏に乾いた音が、いつもの様に寂しく響き渡った
すぐ手が出る素直じゃないお姉ちゃん
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