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「ごめんねロゼ、今日はこれしかないの」
暖炉の火がパチパチと鳴り響く部屋の中、黒髪の少女が人参のグリルの乗った皿をテーブルへと置く
ロゼと呼ばれた金髪の幼い少女は暫し皿を見詰めてから、一片をフォークに刺して少女へと差し出した
「駄目よ、それはロゼの分だもの」
少女は少し困った顔で微笑んで、差し出されたフォークを妹の口へと運ぶ
「おいしい?」
そう問いかけるが、妹は人形の様に黙ったままだ
彼女達の両親が居なくなってしまった夜から一年程が過ぎ去り、以前は明るい笑い声が響いていた部屋は、海底の様な深い静寂に包まれていた
(明日からどうしよう……)
少し窶れた顔をして、少女は空になった樽と金貨の入っていた袋に目をやる
狩りをするも上手く行かない日が続き、両親が残した幾許かの貯えも尽きてしまった
(やっぱり誰かに助けて貰って……)
そんな考えが頭を過ぎったが、少女はフルフルと頭を左右に振る
そうなってしまえば妹は孤児院へと送られてしまう
たった一人の家族と離れたくないが為に“あの夜”の事を少女は誰にも話していなかった
背後でカチャりと皿にフォークを置く音が鳴る
「ああ、ロゼ食べ終わったのね?さあ、歯を磨いてベッドに入りましょう。今日は特に冷えるから……」
妹を暖かい毛皮で包んだ後、少女もベッドへとその身を滑らせる
静かな空間に鳴り響く自らの空腹の音、少女は閉じた瞼の裏に最悪の未来を描いてしまう
「おとうさん……おかあさん……」
そう呟いて、涙を一筋零して少女はいつしか眠りに落ちた


まだ少し薄暗い朝、鳥の囀りに目を覚ます
重たい身体を起こし、少女は妹のベッドに目をやった
「?」
いつもはスヤスヤと寝息を立てている妹の姿がそこに無かったのだ
「ロゼ?」
少女は家の中を捜したが、どこにも見当たらない
ふと壁に目をやると、妹のコートや帽子が消えていた
「散歩に行ったのかしら……」
扉を開けると朝日が差し込み、少女は眩しさに目を細めながらも辺りを見渡すが、妹の姿は見えない
「まさか……」
少女は慌てて家の中へと戻り、愛用の弓矢を手に取り外へと飛び出した


サクサクと小さく雪を踏む音が森へ響く
その足音に気付いた兎が耳をピクリと動かし駆け出した
すかさず小さな影が兎へと飛び込む
影の主が両腕にキーキーと鳴く兎をしっかりと抱えていた
満足そうな表情をして振り返ると、その光景を見つめていた者の姿が目に入る
「狩りは好きかね?」
幼い少女は少し驚いた様に目を見開く
そこに立っていたのは雪のように真っ白な一頭の大鹿だった
問いかけに答えること無く、幼い少女は大鹿を見据えていた
「成程。言葉を発せぬのか。先程の幼いながらもその身のこなし、感銘を受けたぞ。幼き狩人よ。お前にこれを授けよう」
大鹿はそう呟き、右脚を少し上へと持ち上げる
幼い少女の指先が僅かに光った直後、その指に狼を象った指輪が現れた
「それはお前にとって、これから必要になる物だ。愉しみにしているぞ。幼き狩人よ」
そう言い残し、大鹿は朝霧の中へと姿を消した


「ロゼ!!ロゼ!!」
白い頬を紅く染めて少女は妹の名を叫ぶ
「いや……こんなの……お願い……ロゼ……」
小さな足跡を追って見たものの、何処にも姿が見当たらない不安に少女は表情を次第に曇らせる
──ガサガサッ
「!!」
突如聞こえた葉の音に、少女は咄嗟に弓を構えた
葉の隙間から音の主がゆっくりと金色の毛を覗かせる
「ウェア……ウル……フ!!」
弓を構えたまま少女は少しずつ後ずさりをするが、ふと違和感に気付いた
獲物を加えた小型のウェアウルフはクゥーンと鼻を鳴らしながら、その尾をパタパタと振っている
少女が恐る恐る口を開いた
「……ロ……ゼ……?」
その言葉に反応するかの様に、ウェアウルフは嬉しそうに頭を少女へと擦り付ける
「嘘……そんな……ああ……どうして……」
ガクリと少女はその場に膝を落とし、その頭を両腕で強く抱き締めた
「私がちゃんと見ていなかったから……ごめんなさい……ごめんなさい……お父さん、お母さん……」
ウェアウルフは困った様に鼻を鳴らしながら、ポロポロと少女の頬を流れ落ちる雫を舐め続ける

その涙の意味を分からないまま



ロゼがウェアウルフになった経緯を描きたくて少しずつ書き足してたのですが……気がついたら半年以上経ってました(白目
切実に表現力が欲しいです……安西先生……

SHORT STORY

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